昼休み、母から電話がきた
「誕生日ちょっと遅くなったけどおめでとう!」
息子君のか?
「いや、あなた誕生日やったでしょ?」
お母さん、私1月生まれやから来月やなぁ
「えっ?今って何月?12月やん」
せやで、まだ12月。
「あら、勘違いしてたわ」
人の年一つとるん早めるのやめて下さいな
「じゃあ、今月は息子ちゃんの誕生日やったんかい」
せやで、プレゼント買いってお金送ってくれたやろ、ありがとう、おかげで息子君資格取れたで
母は81歳
元キャリアウーマンである
普通の共働き主婦であったが三人の幼い子を連れ離婚(父親が全て悪いのであったが)、末の妹は二歳であった
三人は祖父母に育てられ母はキャリアを積んだ
当時、田舎では離婚したら風当たりはキツい
小学生の私に音楽教師が吐いた言葉は今でも忘れられないくらいだ
しかし思い出しても仕方ないからこうゆう時に悪態をつくだけにしている
人間は生きていたら年をとるし老いるのだなぁ
私もこの数年、やけに年を感じるのだ
maaちゃんなんか1年でシミがめっさ増えておじいちゃんみたいだし、あれと比べたら私はまだオバチャンだもんね
……とか、目くそ鼻くそのカップルだよな
母はよく喋る
しかし、アレ、アレ、アレやん、アレ………が多くなった
こちらの脳トレにいいかもしれない
アレはアレやな、こちらもアレだ
あっという間に昼休みが終わる
お母さん、仕事せなアカンからまた電話するわ
「あー、はいは……
と言いながら電話が切れた
わが母は何でもアッサリだ
母は字も絵も達者である、料理はキッチリ計って作る人である、落ち着いた声がいい、松金よね子に似ている、本当にやりたかったのは貝の研究だったそうだ………少し変わっている
結婚生活がうまく行ってれば優しい母になれていた人である
人生って難しいなぁ
母は言う
人生ってあっという間やから時間もったいない事したらアカンで
私が母と一緒に暮らした時間はたかだか16年程だ
人生あっという間なんだなぁ、何だかそれが分かる年にいつの間にかなってしまった